放浪する吹部男子の話。

主に関西圏と、色々な楽器を放浪している、とある大学の吹奏楽部員のブログです。

時刻表と路線愛称の話。

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2020年6月13日、Twitterのトレンドに「JR京都線」が現れた。

JR東海の「東海道線」呼びに対する議論が起こったからである。

 

そこで、暇だったので、現状の路線名表記について、JR各社のHP等を漁っていたところ、とある問題に気が付いた。

 

それは、時刻表が実体を表していない問題である。

なお、ここでいう時刻表とはJRグループの編集する「JR時刻表」や、JTBの編集する「JTB時刻表」などの、駅や書店においてある大きい時刻表のことである。

 

その現場の1つとして、新大阪駅7・8番線がある。

JR西日本は、新大阪駅において、7・8番線を走る大阪・尼崎方面行電車を「JR神戸線JR宝塚線」と案内している。

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JR西日本の「おでかけねっと」の新大阪駅の案内 (https://www.jr-odekake.net/eki/premises.php?id=06101555)においても、同様の表記が確認できる

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では、全国で広く設置・販売されている時刻表ではどうだろうか。

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左がJTB時刻表(2020年3月号)、右がJR時刻表(2014年11月号)の新大阪駅のりば案内である。JR時刻表は家に古いのしかなかった…

 

どちらとも、大阪方面に向かう電車について、「東海道本線JR京都線」と表記している。なんと実態に即していない名前が、全国に発信されているのである。

(そりゃこんなんじゃJR東海もとりあえず間違いではない「東海道線」呼びするよな…。)

 

なぜこうなるのであろうか。

 

理由として考えられるのが、路線愛称と路線名の機能の違いと、それに起因する時刻表との相性である。

 

路線愛称は「どこに行くか」をわかりやすくするために設定される。そのため、一路線に複数の路線愛称がある場合、上下線で路線愛称が変わる駅が異なることがある。

一例として、尼崎新大阪間を見てみると、尼崎・大阪・新大阪の利用者の多い駅で利便性を向上させるためであろう、上りの京都方面行き列車は尼崎から「JR京都線の案内を行うが、下りの神戸方面行き列車は新大阪から「JR神戸線の案内を行う。

 

一方、路線名は「区間」の呼び名である。「区間」によって定められるので、起終点が決まっており、路線名が変わるタイミングが上下線で異なることはない。

 

では、時刻表に記載するうえで相性がよいのはどちらか。

当然、路線名である。時刻表はページの制約上、区間を分割して表記しなければならない。区切りがはっきりしている路線名は非常に都合がよい。

一方、上下線で区切りが異なる路線愛称を使用すると

・ページを分割する場合、上下で別の駅で分割するのか

・相性の境界が上下線で異なる場合、どうやって表記するのか

という問題が発生する。

また、ほとんどの時刻表利用者は「駅名」から目的のページをたどることが多いため、たとえ正式名称がほぼ死語になっている路線であっても、正式名称を使用することによる支障は発生しにくいだろう。

結果、どうしても時刻表では正式な路線名を採用することとなる。

 

 

が、一方で路線愛称が定着した路線では、それを併記した方が地元の人にとってわかりやすいのもまた事実である。

しかし、併記するには

・「正式な路線名(路線愛称1・路線愛称2)」という書き方では、他地域から利用者はその路線愛称がどう運用されているのか知ることができず、意味がない

・特に上下線が同一のページに書かれている場合、「上りは○○~××、下りは△△~××」と表記しようとすると、路線名の欄が足りない

・そもそも、そう書いたところで他地域の利用者は「つまりどういうこと?」で終わる

という問題が考えられる。

 

この問題に注目して時刻表を見ると、全ての愛称について、上下線共通の「区間」「起終点」を設定して対応しているようだ。

JR京都線(京都―大阪)、JR神戸線(大阪―姫路)といった具合である。

こうすれば、最小限の情報量で、とりあえず欄に書き込める。

 

が、実態と乖離している問題の原因となっているのは言うまでもない。

尼崎新大阪間を見てみよう。

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 時刻表では、実際の案内のうち、最も「境界」の要素が強い大阪駅を「起終点」としたため、新大阪駅・尼崎駅・塚本駅において、案内の乖離が発生してしまっている。

 

そして、最初に挙げたような状態になっていると推測される。

 

 

 

では、どうすればよいか。

 

どうすればよいか、その道のプロである時刻表を編集する人が何十年も試行錯誤しているはずである。

そして、その結果がこれなのである。

 

釈然としないが、だからといって代替案も思いつかない。

 

やはり、現行の時刻表が最善なのであろう。