受験前日に君が代を歌い万歳と叫んだ話
(仙台駅前)
※これは実話であり、本人の記憶を元に構成しています。
約一年前、とある受験生が、仙台の地に降り立った。
オープンキャンパス(日帰り)に行った他は7年近く来ることのなかった仙台の地。
緊張と懐かしさと不安と期待と…
いろいろな感情が入り乱れていた。
電車が非常に混んでいた他は、特に何事も起きなかった。予約していたビジネスホテルにたどり着き、無事チェックインまで済ませることができた。部屋に入り、古文単語や英単語の確認をしているとすぐ夜になった。
ホテルのプランには朝食しか付いていなかったため、昼食と夕食は買い出し、または外に食べに行く必要があった。
初日はすぐ近くにあった某なんでも揃って素敵なお店で食料調達した。夕食を済ませ、風呂に入り、やり残しを片付けて、寝た。
翌朝、起きてすぐ身支度を整え、朝食を食べる。過去問を確認し、午前10時半頃、昼食の買い出しにいくことにした。
そして、ここで、かばんを見て気がついた。
財布がない。
さいわい受験票も、帰りの切符も、生徒証も別の場所に入れていた。また、別に2つ、1万円ずつ入った封筒をかばんに入れていた。そのため、直ちに受験に支障が出ることもなかった。
が、こんな状況で勉強が手に着くわけがない。
直前に財布を使用したのは前日の夕食の買い出しの時である。
某店に直ちに向かった。
が、店員からは一言。
「財布の落とし物はないです」
当然パニックである。
ものを買っている以上、某店舗で財布を使っているのは明白である。また、そのあと何も買っていないため、財布を使った場面は存在しなかった。
ひとまず、別封筒の1万円を崩し昼食を取り、ホテルにかえり部屋中をくまなく探す。ビジネスホテルの一室など狭いので、すぐ見終わった。
ない。
どこで落としたか見当が付かないようでは警察に行っても話が進まない。完全に途方に暮れた。
ここで何を思ったか、テレビをつけた。テレビでは天皇陛下御在位三十年記念式典が正に始まるところであった。
床にひざまずき、食い入るようにテレビを見つめた。
君が代を歌った。
陛下のお言葉をしっかり拝聴した。
万歳三唱をした。
気がつけば最後まで観ていた。
おおよそ、受験前日の受験生がするようなことではない。
きっと同じホテルに滞在していた他の受験生は、隣室より聞こえてくる君が代や万歳三唱に、ただただ恐怖を感じたことであろう。
しかし、当の本人の方はというと、360度回って落ち着いていた。(つまり、落ち着いたつもりであって落ち着いていないのだが。)
夕食を買いに行くのもかねて、もう一度某店に出向き、別の店員に聞き、何も情報が得られなければ諦めよう、という気になっていた。
尋ねると、「前日の夕シフトの人が財布を帰り際に交番に持って行ったよ。」との回答が。
どうやら、午前に聞いた店員は朝シフトの人だったために知らなかったようだ。
教えられた交番に行き、事情を説明するとすぐに財布は見つかった。
身分証として見せた生徒証から、受験生であることはすぐ割れ、激励もされた。
財布を取り戻し、夕食を食べ…
夕食の時間である。受験前日にもかかわらずまともに勉強していない。が、今更がっつり勉強する気も起きない。寝た。
翌日の国語と英語の試験は耐えた。
慢心した。
数学は合格目安のボーダーを安定して超えていたからだ。
翌々日の試験で、何もしなかった数学が壊滅したのは別の話。
教訓を要約すると…
・貴重品の管理ちゃんとしろ。
・お金は分散して入れとけ。
・余裕あると思う教科ほど慢心するな。
以上です。
二次試験、頑張ってください。