黒江真由の話。
※「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部決意の最終楽章」を中心に、響け!のネタバレあり。
未読の場合、ブラウザバック推奨。
響け!ユーフォニアムシリーズでは多くの登場人物が存在する。
久美子、麗奈、葉月、緑輝、あすか、優子、夏紀、のぞみ、みぞれ、奏、求、滝先生…
人それぞれ好みはあるだろう。個人的には夏紀先輩が好き
が、ここで取り上げるのは真由。
最終楽章にのみ登場、アニメ化されていないので、他のキャラよりなじみの薄いであろう真由。
久美子たちには理解の難しい存在として書かれていた。
おそらく読んでいて、「なぜそういう言動に至るのか?」と疑問に思う人も多いと思う。
ただ、自分からすると、かなり共感できる人物だったので、個人的な見解を書いていく。
真由がどんな背景を持つ人物か、簡単に挙げると
・福岡の吹奏楽強豪校からの転入生
・少なくとも中学のころからユーフォを吹いている(中学時代にマイ楽器購入済み)
・親の仕事の都合で引っ越しを非常に多く経験している(最低でも8回!)
流石に8回も引っ越したことはないが、3回の転校をしている自分にとって、まさに真由は「ユーフォを吹いていたころに、マイ楽器を買っていた自分」。
なので、最終楽章を読み進めるにあたって、ずっと、自分を重ね合わせて読んでいた。
なぜ、ソロを久美子に譲ろうとするのか。
結論から言うと、「転入生(=よそ者)」だからだ。
もっと言えば、「周りの人がいいと思うことが、自分にとってもよい」のである。
実は、過去の転校の時に、吹奏楽部への入部をためらったことがある。ソロに関しては、技術不足でそもそもそんな状況にならなかった
自分がためらった理由、それは
「迷惑をかけたくないから」
である。
吹奏楽の世界に入ったのは小5の5月。4月に入ったメンバーはすでにパートが決まっていたため、無理やりユーフォにねじ込む形になった。
あらゆることを同級生に教えてもらう、そんな日々だった。
確実に、練習時間を奪っている。
しかも、下級生なら「後につながる」が、同級生なので、卒業も同時である。あとには残らない。
よそ者が、迷惑ばかりかけて、申し訳なかった。
正直に言ってユーフォはもとから足りていた。
そして、自分がいなくてもバンドは活動できていた。
つまり、いなくてもいい、極端な言い方をすれば、いない方がよかった、そう感じたのである。
(もっとも、元からいた人はそんな考えにはならないのだが。)
で、中学2年の春、転校した。
元の学校は小編成銅賞、対して転校先は大編成金賞。
見るまでもなく、技術差は明らかだった。
迷惑をかけるのは目に見えている。
結局、では他に何をするか、と考えたときに何もなかったのでひとまず入ったものの、この時の他にしたいことがあったら、きっと吹奏楽の世界から身を引いていただろう。
救いだったのが、技術云々以前に部員不足が深刻だったため、半人前な自分でも、「周りに求められる」人材であったことだ。
自分語りから、真由の話に戻す。
真由は部内での過去のトラブルに敏感になっている。
これは、自分が入ることによって、同じようなトラブルが起こらないか、
そして、元からいる部員に迷惑をかけないか、気にしているのであろう。
そして、麗奈と香織のソロ騒動を知る。
久美子と真由、ほぼ技術的には同水準(と推測される)。
久美子は部長であり、部内では、自然と久美子がソロを吹くことへの期待が高まっている。
しかし、真由もオーディションに参加すれば、滝先生がどちらを選ぶかわからない。
真由が選ばれた場合、部が不穏な空気になるのは目に見えている。
あくまでも、「転入生(=よそ者)」である(という認識をしているであろう)真由が部を乱してしまう、それは真由にとって、絶対に避けなければならないことである。
では、なぜ奏のように、その場まで吹かないことを伏せておかなかったのか。
これもまた、単純に、それが部の空気を乱すことが(奏の例もあり)目に見えているからである。
そこで、真由が行きついた結論が、「久美子との合意の上で」「オーディション辞退」なのだ。
部の空気を乱さないためには、久美子にソロを吹いてもらう必要がある。
2人の間で前もって話が付いていれば、久美子の技術的に考えても、それ以上他の人が詮索する理由もない。
あとは堂々と辞退してしまえば万事解決。
そう考えたのであろう。
もっとも、久美子が↑を理解したところで、麗奈が絶対に許さなかっただろうが
最後に、この話を補強する要素として、真由の写真の話を挙げる。
真由は最終楽章ラストまで、真由は写真を「撮る」側に徹し、「撮られ」ていない。
おそらく真由が「よそ者」意識を持っていたが故、であろう。
最後のシーンで真由も写真を「撮られる」側になる。
ここにおいて示されるものは、まさにこの真由の「よそ者」意識、の打ちこわしであろう。
この写真が、真由を精神的に「北宇治高校吹奏楽部員」にしたのである。
真由について、実際どういう心情であったかは、武田先生のみぞ知るものであり、ここに記したものは、あくまでも一読者の妄想に過ぎない。
しかし、これを機に真由について、ただ、よくわからないキャラ、ではなく、真由なりの苦悩があるのだろう、と思っていただけると、ありがたい。